Tel:0569-21-1730 浄土真宗 真宗大谷派 坂田山 順正寺
愛知県半田市堀崎町1丁目58番地

2018/08/01 究極の出来事

 千代野は夜、
 井戸から水を汲み、おけに移し替えた。
 抱えた桶の中、見事な月が写っていた。

 鎌倉時代、千代野は皇族の娘として生まれた。その容姿はとても美しく、多くの皇族たちが求婚したという。しかし千代野はそんなことには一切興味を抱かなかった。
あるとき、禅僧から、 「いくら美しい容姿を授かったとしても、老衰の日は必ずやって来る。最後に白骨しか残らないこの世の無常は、仏法に尋ねることでしか答えは得られないのだ。」
 こんな言葉を投げかけられた。 千代野は今までそんなことを考えもしなかったが、禅師の言葉は脳裏から離れず、いつしか自分も出家して尼僧となり、悟りを開きこの世の無常を悟りたいと考えはじめた。

chiyono

 千代野はもっぱら修行に打ち込める寺院を探し、自分の思いを訴えたのだ、しかし断られてしまう。別の寺に行っても同じように断られてしまう。そしてまた別の寺院の門を叩いてお願いしても同じように断られてしまう。千代野は、なぜ私を尼僧として受け入れてもらえないのか、その本当の理由を知りたいと思い禅師に詰め寄ったのだった。  するとその禅師が言うには、 「この寺には、多くに修行僧がいる。あなたの容姿は美しすぎて、それでは他の修行僧たちの心を乱してしまう、修行の障りになってしまうからだ。」

 自分では思っても見なかった事が仏法の障りとなっていることに、千代野は途方に暮れてしまった。それでも彼女のこころの中では、「出家したい。」という思いが確かな思いとなっていく。 ついに千代野は、大きな決断をする。 赤く焼けた炭を自分の顔に押しつけ、何度も何度も押しつけ美しい容姿を焼いてしまったのだ。

 もう一度あの禅僧のもとを訪ね、自らの出家を懇願した。禅僧は千代野の姿を見て、その決意を知り弟子として受け入れた。 修行が始まると、禅師は驚いた。千代野の心はもうすでに何もかも準備が出来ていたのだ。経典を学ぶこと、座禅を組むこと、日々の生活のこと。
 三〇年の月日が過ぎたある夜、千代野は井戸から水を汲み桶にあけて抱えて運んでいた。そこには桶の水に映し出された月が写っていた。千代野はその美しさに見とれていた。そして何故にこのように美しいのかという思いがこみ上げていた時。 突然、その桶の箍(たが)が外れて底は抜け落ちた。 一瞬に水はなくなり、月もなくなった。 そのとき、千代野は悟りを得た。

あれこれと たくみし桶の 底抜けて 水たまらねば  月もやどらじ
   千代野

六角堂ステンドグラス

ステンドグラス

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