Tel:0569-21-1730 浄土真宗 真宗大谷派 坂田山 順正寺
愛知県半田市堀崎町1丁目58番地

2017/09 和尚よもやま相談 / この指輪 どうしよう。 

 ある時、女性から尋ねられた。
「昔つきあっていた男性からもらった指輪が、押し入れの中にしまってあるのですが、 どうしたらいいでしょう?」
突然の質問に困惑してしまった。
どうやら私が僧侶であることが分かったら、これだけは聞きたくなってしまったようだ。
その女性は40才ぐらいだろうか、結婚をして小さな娘がひとり。小さなビジネスをはじめたばかりだそうだ。

 このような相談をされるとき、あまり物事を複雑には考えないようにしている。
普通に考えれば、結婚をして幸せな家庭を築こうとしているときに、自分の家の中に「開けることの出来ない箱」がある、「触ることの出来ないもの」があること自体が不自然な状況だ。  たとえるならば、流れ出る場所がどこにもなくなってしまったため池があるようなもの。 家の中でその中だけは見たくないように封印している。こころの中でそのことだけは思い出したくない、記憶から隔離しようとしている。

指輪

 女性は、その男性と結婚直前まで行ったそうだ。しかし故あって別々の道を進むことになったという。
その時にもらった指輪が、返すことも出来ず、処分することも出来ず、押し入れの中にその思いごと追いやってしまったらしい。
 いくらそんな思いを封印して見ないようにしても、こころの中の一部分であることに変わりはない。
 自分の家の押し入れの中にしまい込んであるとはいえ、自分が抱え込んでいることに違いはない。
流れない水はよどんでいく。濁っていく。
それは指輪という形ではあるがこの女性の心のどこかに流れない場所があるということだ。 それは、決して健全は状態とは言えない。  人間の身体とてそうだ、血液が流れが悪くなり滞っているところをほっていくと必ず問題が起こる、病気になってしまう。

 人生のパートナーを見つける時期は、いろいろあって不思議はない。男性が女性に指輪を贈ることは、大きな意味を持っている。  結婚と言うことは一つの社会の単位として身を固めること。そしてこの女性は、男性の思いに答えることが出来なかった。その狭間で罪悪感を抱いたのだろう。  それは女性が悪いわけでもない。その男性が悪いわけでもない。ただ事実としてご縁がなかったのだ。  そして、指輪だけが縁あって女性の手元に残った。

  まず、指輪をプレゼントしてくれた相手に、
「私に好意を持ってくれてありがとう。」
と、感謝の思いをもう一度思い出さなくては。
その時、確かにそう思ったから受け取ったのだ。
けれども、ご縁がなかったのだ。
その事実に対して、ちゃんと話をして指輪を返すことが出来なかったことは、その女性が男性に対して不誠実であったかもしれない。
それは2人の間のこと。何であれその苦い思い出にもう一度向き会わなければ。
 今、小さなビジネスを立ち上げているという。
 この指輪がどれほどの価値のものかは知らないが、 出会ったことの感謝とともに、この指輪を自分の成長のために使わせてもらえたなら、それはそれですばらしいことではないか、
 いつかその男性と、晴れ晴れと再会出来る日が来るかもしれない、
そして笑い話のように指輪の話が出来るかもしれない。
        順正寺 住職

六角堂ステンドグラス

ステンドグラス

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